Zaurus 3桁機用SDHCドライバー v2.0(32GB対応版)の長時間ロードテスト結果について
掲題のとおり bucchi さんが改造された『SL-Zaurus 3桁機用 SDHC ドライバー v2.0(32GB対応版)』の長時間ロードテストを実施しましたので、その結果についてご報告いたします。
まず、最初にテスト結果から、SL-C860 標準搭載の『Music Player』の連続再生による72時間(3日間)の長時間ロードテストを実施しましたが、まったく問題はなく、安定性が確認されました。
テストの詳細は、以下のとおりです。
テストの目的
元々、深く考えずに『私が留守の間も Zaurus 君に働いてもらおう』ということで、標準搭載の『Music Player』による連続再生テストを朝セットして出かけたのが発端で、テスト16時間目に buuchi さんの blog のコメント欄にご報告したところ、bucchi さんから
bucchi さんからのコメント欄での返信
『本格的なロードテストありがとうございます。結果がちょっと心配ではありますが、貴重なデータになると思います。個人的にはこのテストで OK なら結構安心して使っても大丈夫なレベルだと思います。』
という温かいお言葉をいただいたので、最終的に72時間(3日間)の長時間ロードテストを実施しました。
まぁ、ということで SD メモリーカードドライバーのようなデバイスドライバーに長時間ロードテストが有効かというツッコミは無しでお願いいたします。
テストしたドライバーについて
今回テストしたドライバーですが、表1の通り、buuchi さんが SHARP オリジナルのドライバーを改造された、3桁機用(SL-C750、SL-C760、SL-C860)の SDHC ドライバー Ver2.0(32GB 対応版)です。
表1 テストしたドライバー
バージョン | v2.0 (32GB SDHC 対応版) |
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インストールパッケージ名 | zaurus-sd-driver-update_2.0-for-Cxx0_arm.ipk |
テスト環境について
今回のテストに使用した環境は以下の通りです。普段、Ruby・Ruby/Qte のプログラミングに使用している専用端末を使用しました。
表5 テスト環境
機種名 | SL-C860 |
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ROM Version | 1.40 JP |
Kernel Version | Normal Kernel 2.4.18-rmk7-pxa3-embedix-021129 |
電源 | AC アダプターを接続して使用 |
その他 | ・すべてのアプリケーションの「高速起動」の設定は無効にしてあります ・swap は使用していません ・ヘッドホン端子に外部スピーカーを接続(SL-C860 はきちんとしたスピーカーを搭載していないため) |
スクリーンショット [設定] - [システム情報] |
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スクリーンショット コマンドラインによる情報 |
テストに使用した SDHC メモリーカード
今回は、手元にあった最大容量の 32GB SDHC メモリーカードを使用してテストを実施しました。
表6 テスト対象の SDHC メモリーカード
写真 | メーカー | 容量 | 種別 | 型名・仕様 | テスト時の 初期化状況 |
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東芝 | 32GB | SDHC | SD-K32GR5W4 CLASS 4(海外向けリテール品) 国内向けの相当品 |
工場出荷時のまま |
テスト方法について
『長時間ロードテスト』にどういう方法が良いかちょっと考えましたが、以下の理由から標準搭載の『Music Player』による音楽ファイルの連続再生テストにしました。
- 連続的に休みなしにファイル読み出しが行われる
- そこそこのビットレート(今回の場合は 128kbps)でファイル読み出しが行われる
- 音に対して人間は敏感で、読み出しの際の不具合により発生すると思われる「音飛び」や「瞬断」は検知し易い
- ながらでテストができる(他の作業をしながらテストがてきる)
- 標準搭載の『Music Player』なら特殊な環境や設定が不要
- Linux の『バッファ・キャッシュ』の影響のないファイルサイズ(30MB以上必要)のテストファイルを使用する
□Linux のバッファ・キャッシュの影響の考察
別途実施したベンチマークテスト(dd コマンドによる読み書き)の予備テストで、ファイルサイズが約20MB以下のファイルは『バッファ・キャッシュ』にすっぽり収まってしまって正確なテストができませんでした。
今回のテスト環境では、再起動直後のメモリー状況は下のスクリーンショットおよび下表のようになっています。
SL-C860 の再起動直後のメモリー状況について(スクリーンショット) |
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区分 | 容量 [MB] |
説明 |
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全体容量 | 60.66 | SL-C860 の場合、物理的に 64MB の RAM エリアがあるが、 TEMP 領域を RAM 上に RAM ディスクとして確保しているため 64MB より少なくなっている |
使用量 | 19.42 | Linux のカーネルや Qtopia の環境が展開され実際に利用されている容量 |
バッファ容量 | 0.12 | 一時的なバッファとして確保されている容量 |
キャッシュ容量 | 22.13 | Linux のカーネルや Qtopia の環境が展開された際に、そのファイル自体が今後の利用に備え、スッポリとキュッシュに収まっている状態、Linux では主記憶に空きがある場合できるだけキャッシュするように動作する |
使用量の合計 (使用量+バッファ容量+キャッシュ容量) |
41.67 | バッファ容量とキャッシュ容量を含めた 実際のメモリー使用量 |
残り容量 (全体容量−使用量の合計) |
18.99 | 実際に使用できる残り容量 |
この場合、残り容量の 18.99 [MB]は、要求があればさらに『バッファ・キャッシュ』に新規に割り当てが可能な容量であり、上記のベンチマークテストの予備テストで、ファイルサイズが約20MB以下のファイルはバッファ・キャッシュにすっぽり収まってしまって正確なテストができなかったという事象と一致します。
今回の長時間ロードテストでも同様の懸念が有り、音楽ファイルを再生しているが、実際には主記憶メモリーの『バッファ・キャッシュ』から読んでおり、SD メモリーカードからは読み込まれていないという事態になりかねません。
このため、今回は使用する音楽ファイルのファイルサイズをすべて 30MB 以上のものから選定し、『バッファ・キャッシュ』の影響を受けないように考慮しました。
□テストに使用した音楽ファイルについて
ひとつのアルバムをひとつのファイルにリッピングしたもので各曲ごとに1ファイルのものではありません。
聴いていて飽きないようにようにお気に入りのアルバムから10本を選びました。
表8 テストに使用した音楽ファイルの仕様
形式 | MP3 CBR 128kbps |
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ファイル数 | 10本 |
平均ファイルサイズ | 43.7MB(最小:35.5MB、最大:63.2MB) |
合計ファイルサイズ | 437MB |
10本のファイルの連続再生時間 | 約7時間58分 |
□テストの手順
- (1) 上記のテスト用音楽ファイルを 32GB SDHC メモリーカードにコピー
- (2) 電源として AC アダプターを接続
- (3) ヘッドホン端子に外部スピーカーを接続(SL-C860 はきちんとしたスピーカーを搭載していないため)
- (4) AC アダプター使用時のオートパワーオフの設定が無効なことを確認(普段から AC アダプター使用時のオートパワーオフは無効にしているが念のため、なお『Music Player』は AC アダプター使用時にはアプリケーション側でオートパワーオフを無効にしているということをどこかで見たことがあるが未検証)設定ファイル /home/zaurus/Settings/qpe.conf のつぎのエントリーを確認
[Screensaver] Interval_AC_09 = 0 Interval_AC_ScreenSaver = 0 Interval_AC_idx = 9
テスト経過
- 2010年2月16日(火) 07:00頃 『長時間ロードテスト』開始
この間、約12時間
- 2010年2月16日(火) 19:30頃 帰宅して、再生状況を確認 → 正常に再生中
- 2010年2月16日(火) 23:55頃 16時間経過、bucchi さんの blog にコメントを投稿、現在も正常に再生中
- 2010年2月19日(金) 07:30頃 『長時間ロードテスト』終了
テスト結果
- 最終的に72時間(3日間)の長時間ロードテストを実施しました。
- 自宅に居て、就寝時以外は再生音をながらで聞いていました(1日平均6時間程度、延べ18時間)。その結果、読み出しの際の不具合により発生すると思われる音飛びや瞬断等の不具合の発生は一切ありませんでした。
- 以上のことから、読み出しだけになりますが、3桁機用SDHCドライバー v2.0(32GB対応版)の安定性は問題無いことが確認できました。